宅建士試験では難問も出題されます。
今年の試験でも権利関係を中心に難問が出題されました。
そんな難問でも正解率を上げることはできます。
今回はその点について解説していくことにします。
⒈ 正解する「確率」の話
宅建士試験では1問につき4つの選択肢で出題されています。
つまり4択問題となっているのです。
完全に運任せで答えることにした場合、正解する確率は25%となります。
ただ、実際には選択肢を検討して解答することになるので、確率はもっと高くなってきます。
選択肢のうち1つを消去することができたとすると正解率は33%となり、2つ消去することができた場合には50%にまで上がってきます。
⒉ 難問と消去法
先ほど選択肢を「消去する」と言いましたが、これはどういうことかというと、「その選択肢については自信を持って候補から外すことができる」ということです。
例えば、「正しいものはどれか」という問題であった場合に、選択肢の1つにあきらかに違う(と自分で考える)ものがあったとしましょう。
その選択肢は正しくないと考えるわけですから、残った3つの選択肢で検討することができます。
このように、選択肢を消去するやり方を「消去法」などと言ったりします。
難問の場合であっても全選択肢が難しいということは稀です。
つまり、難問の場合にこそ「消去法」を使って正解する確率を上げていくことが重要となってきます。
⒊ 本試験問題を使って解説
ここで、実際に今年の10月試験で出題された問題を使って解説していきます。
まだ各予備校の評価が出ていませんが、私個人としては「難問」の部類に入る問題だと考えています。
【令和2年(10月) 問2】
令和2年7月1日に下記ケース①及びケース②の保証契約を締結した場合に関する次の1から4までの記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
- ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。
- ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。
- ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。
- 保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。
答:4
問題文も結構長いですし、問われている論点も細かく、今回の民法改正に関する部分からの出題となりました。
ただ、この問題も消去法を使うことで2択まで絞ることができる問題だったりします。
まず選択肢1。
保証契約は「書面」でしなければ効力が生じません。
そして選択肢3。
連帯保証の場合には「催告の抗弁権」が有りません。
この2つの知識は保証の中でも最重要に位置付けられているので、受験生は知っていて当然の知識だと言えます。
そうなると、残るは選択肢2と4となり、この時点で正解率は50%となります。
この2つの選択肢はなかなか難しいので、2と4で悩んだ受験生が相当多かったのではないかと思われます。
⒋ 改正法は要注意
2と4が難しいと考えられる理由の1つに「改正法」があります。
どちらも今回の改正で新しく設けられた規定です。
改正法の学習をしていないとそもそも答えられないような内容でしたし、改正法の論点中でも細かい部分でした。
これまでに宅建士試験の学習をしてきたことのある受験生(旧民法の学習をしてきた受験生)にとってはかなり厄介な問題だったかもしれません。
ちなみに、先ほどの問題では4が正解となるので、2は正しくない選択肢ということになります。
「個人根保証契約」というものが改正法で新設されました。(民法465条の2)
この言葉の通り、「個人」が保証人であるものを保護しているので、法人については対象外となります。
極度額の設定は「個人根保証契約」に関係するものですので、法人も極度額を定めなければならないとしている選択肢2は誤っていることになります。
選択肢4は、465条の6の知識を問うもので、事業に係る貸金債務を主債務とする(根)保証契約個人保証人の場合「公正証書」で履行の意思表示しなければ効力が生じないという内容です。
とはいえ、おそらくこの規定の部分まで学習していた受験生は少なかったはずです。
このように、改正法の部分からは細かい規定の趣旨を問う問題が出題されているので、12月試験や来年度以降の試験では改正法の規定に注意しておく必要があります。